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無痛文明論/森岡正博 抜粋

そういえば「転轍」というタイトルは、「無痛文明論/森岡正博」きっかけで頭に残っていた言葉です。肝心な「転轍」が出てくるところは、メモしてませんが、、気恥ずかしいほどにアツかったり、ちょっと抽象的だったりもしますが、核心を突かれている感があります。以下抜粋。

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第三章 無痛奔流


大人たちからの言葉の裏に隠されたメッセージは、こういうものだ。

「もうこれ以上、私の目隠しをあばかないでおくれ。私たちも自分の人生を生きることをあきらめたのだから、おまえも自分の人生を生きるのをあきらめてくれ。私たちも、人生の意味や、言っていることとしていることの矛盾について目隠しして、会社や家庭や社会に適応して生きることを選択したのだから、おまえもそうやって生きていってほしい。私たちは、おまえが、長いものに巻かれて、楽で安定した人生を送ることを望んでいるんだよ。それが人生だよと私たちもあきらめようとしているのだから、私たちのこのような自己納得を壊さないでくれ。 そしておまえも、はやく社会に適応して、私たちと同じような、欺瞞とあきらめに満ちた、そして楽で安定した、後ろめたい背徳をむさぼることだけが生きがいの、ダブルスタンダードの人生へと進んでいってほしい」。


P192

第四章 暗闇のなかでの自己解体


 しかし、そのような他者と、私はどうすれば出会うことができるのだろうか。 そのためには、まず自分が、いまここから悔いのない人生を生き切るのだという覚悟をすることが必要だ。 そして、いまここから実際にそのように生きはじめ、自分を問いなおし、自分がほんとうはどういうふうに生きたかったのかという少年時代・青年時代の思いをふたたびよみがえらせ、自分の「中心軸」を再発見し、いまからでも遅くはないからその生をもう一度生きはじめてみようと決意することだ。 そのような生を一歩踏み出して、あなたの生き方の全体をもって、世界にメッセージを発信してゆくのだ。「自分自身の悔いのない人生をふたたび生きはじめた人間が、ここにいる。私は、自分を掘り下げ、自分自身と戦い、自分に与えられた生の可能性をいまここから開花させようと立ち上がったのだ。 無痛化する社会に流されて死につつ生きるのはもうやめようと、決意したのだ」。そういうメッセージを、あなたの生き方それ自体を通して、発信する。 あなたの全身を使って、あなたの動作のひとつひとつ、表情のひとつひとつ、声の調子ひとつひとつを通て、あなたは自分自身を表現していく。 誰のためでもない、自分自身のために。 そして、 あなたと戦い合う大切な人との出会いを、こころの底から求めるのだ。そのような人とは、生きているうちにはぜったいに出会えないと覚悟しつつも、そのような他者を求めて、メッセージを発し続けること。 所有をめざすのではなく、他者を求めること。

 出会いは、あなたの予期を超えて、向こうから突然やってくる。 出会いはけっして予想できないし、コントロールもできない。もしコントロールできたとしたら、それは「出会い」ではない。出会うためには、 求めなくてはならない。不可能だという覚悟を決めて、出会えなくてもそれでかまわないと覚悟し切って、両手を完全に空にして、安全パイをすべて捨て去って、そして両手を広げて大空に向かって出会いを求めること。出会いが訪れるかどうか、誰にもわからない。 それでもいいから、求めること。どうなるかわからない、何も起きないかもしれない、絶望へと落下するかもしれない、何も予測できない、誰も保証してくれない 、安全なものは何もない、苦しみばかりが増えるかもしれない、それでもなお、両手を広げて求め続けていくこと。

〈「出会い」こそが、無痛文明にとっての真の他者である〉。

 けっしてコントロールできない、予測もできない 「出会い」に自分の人生を賭けること、そこからのみ、無痛文明の外部へと脱出する道は開けてくる。 出会いを求め続けよ。 そこにのみ「希望」はある。そして、「出会い」をもコントロールしてこようとする無痛文明を、その内側から解体し続けよ。 「出会い」はまた、無痛文明論にとっての他者でもある。 無痛文明論は「出会い」を提示できない。出会うためには、自分の人生のなかで出会うしかない。 無痛文明論を捨てよ。 無痛文明論を自己解体せよ。 あなたは、自分自身の人生を生きるのだ。二度と巡ってくることのない、あなた自身の、悔いのない人生を。


第八章 自己治癒する無痛文明


 解体が目に見えやすいものとして、この私自身に貼り付いている無痛化装置がある。それらを発見し、みずからその装置を停止してみる。そして自分がどのようになるのか、様子を観察する。 快楽と快適さの維持や、苦痛の回避のために、私がしがみついている無痛化装置があるはずだ。 その無痛化装置と引き換えに、私から自己変容と生命のよろこびの可能性が奪われているはずだ。 無痛化装置は私の財産かもしれない。私の家かもしれない。家族かもしれない。パートナーとの関係かもしれない。子どもかもしれない。 地位かもしれない。職場かもしれない。セックスかもしれない。その無痛化装置に疑問を投げかけ、無痛化装置を一

自分から切り離してみること。あるいは納得したうえで、それを捨て去ってみること。自分自身の悔いのない人生のために、それを捨て去ってみること。私は他人の前で自分のことを正当化する。私は、自分に向かっていつも言い訳をしている。それが私にとっての無痛化装置かもしれない。私が自分の人生を生き切れていないと心のどこかで感じるなら、その無痛化装置を使うことを、一度自分に禁じてみてはどうか。そのあと生じるであろう禁断症状を、じっくりと味わってみてはどうか。自分にとってのほんとうの問題を直視したいと心のどこかでは思っているのだけれども、目の前に無痛化装置があるものだから、気がついたらついそちらのほうに手を伸ばしてしまって、それに溺れ、いつまでも無痛化装置の蜜を舐め続けているのが、私ではないのか。そのことを鋭く指摘する者を、激しく攻撃し、その者が立ち去ったあとで泣いているのが私の姿ではないのか。

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