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永田耕衣 69@而今

舞踏とは命がけで突っ立った死体である が帯文となっている「土方巽頌」吉岡実を読んでなかったなと古本をチェック、勢い余って吉岡実散文抄も一緒に入手して読む。吉岡実が激奨している俳人、永田耕衣が面白そうと「而今」という句集を入手して読む。難しい言葉が沢山出てきて、漢字手書き検索のWebを横に置いて、毎週末の朝に読む。何週かかけて今日読み終わったので、気に入った69句を、こちらに並べてみます。 永田耕衣 69@而今 -- 路草にむかひて萎む木槿かな 黒氷柱吾が失着もまた絶景 寒雀老母と戯談交はしけり 夏の雲槐の幹も寂びたりや 落雁や机の角に伏しまろび 旅の者過ぎ去り行くや貝割菜 芦の花幾たりに逢ひ別れけむ 逢生やうす緑なる雲のむれ 月明の畝あそばせてありしかな 末枯や玻瑠戸のうちの蝶一夜 他の蟹を如何ともせず蟹暮るる 瞠きてにわとり何を信ぜしや 黒揚羽じつと怺へて樹々はあり 老梅の隈なく花を著け終わる   目的無くくらげの浜の土堤を行く 夏蜜柑いづこも遠く思はるる 紫蘇が枝を張ると雖も鴉過ぐ 地を踊り出る馬鈴薯よ自殺せず 馬鈴薯を掘るたび我は何処へ行く 物として我を夕焼染めにけり 池の鯰逃げたる先で遊びけり 遠景を容れて緑陰の悶ゆる 何を捨てて冬日浴びおる山の笹 青年が土筆避け行く鯉魚を抱き 無職ゆえ白い元気な蝶ばかり 蛙仰向き死す展望利く水族館に 遮断機よさらば市場で蜜柑買うて 鰭のように水族館を出てこぬ老人 饅頭は鳴らぬ蛇ども痩せゆく村 鐘鋳損ね鋳物師顎に落花溜める 会う時なく萍海へ出る飯時 無花果を女と北風を啜るように 冬海に杖を挿し置き婆来たる 衣そのものが神なり葡萄成る 夢みて老いて色塗れば野菊である 彼の柚子を額に嵌め行く素老人 闇老いて葱浮々と洗われけり 髑髏談笑淫欲の音の木霊のみ 白桃の肌に入口無く死ねり 白桃身嘴のごときを秘めている 其の中に墓在るごとし老蛤 鈍鳥去る時は薄氷解けていた 雪地獄雪見白魚雪を見るは 茸汁やどのてのひらも墓である 深まって椿のぞつと開くなれ 晩年を覗いて見よう葱の筒 赤とんぼ死近き人を囲み行く 皆行方不明の春に我は在り 撫子と諸悪莫作と乱るる東 陽炎や心即浮世即乾坤 墓参惨裸婦の如きが思わるる 自転して魂や分け入る夏逢  陸沈の宙首燻ゆる春夜かな 歓談のあとで死にけり赤とんぼ 古池やあかつきごとの夕奈落 晩年や夢を手込めの梨花